芭蕉先生

小さい頃、消しゴムに好きな人の名前を書いてカバーで隠して、その消しゴムを綺麗に使いきると恋が成就するみたいな…

そんなおまじないが私の周りにはゴロゴロ溢れかえっていた。

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あと、ほら、なんだっけ、シャーペンを何回ノックして折れずに好きな人の名前を繰り返し書いて

出ている分の芯を使い切ったら…とか、どっちの手の小指のツメだかを何色だかに塗って、とか…。

本気で信じていなくても、みんなやってたんだよね。
女子たちのたしなみというか…。

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そんな私がなぜ今子どもの頃の懐かしいおまじないを思い出したかっていうと

目の前で教え子たちが繰り広げている驚愕のおまじないに戦慄しているから。

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今私のクラスでは「千社札」が大流行している。
いやいやいや、渋い！渋すぎる！！
と盛大につっこんだんだけど、そのやり方が若者だった…！

なんと、特定の「千社札」に名前を書き込んで神社に貼ったものをSNSにアップするというのだ！

なんという！！

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そして、それだけでご利益があるわけではなく、そのSNSにアップされた記事ないし写真などを

見知らぬ誰かがSNSにアップやシェアなどで拡散する事によって願いが叶うというのだ！！

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お守りとか、千社札とか、おまじないとか、おみくじとか、そういう類のものって

神社に出向いていって、粛々と神様にお願いするもんじゃないのかね。

じ…時代は変わったな…。

くらくらする私に「先生もやってみればー」と生意気な女子高生が言うので
「そんな現代っ子みたいなのには着いていけませーん」と答えたら、
見事に「先生、どうせ消しゴムに好きな子の名前書いて、とかの世代でしょ」と返り討ちにあった。

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その場では「はいはい、神頼みも良いけど受験は己の実力がものを言うからね。しっかり勉強しなさい」と教師らしい事を

言って立ち去ったが………しかしこれって割と画期的かも。

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神社でお参りする時も神様にきちんと名前や住所を言わないといけないって言うからね。
SNSで拡散されたら、神様にだって届きやすくなるかもしれない…。

そして、そんな私には、気になる殿方が…。

28にもなって小娘のようで周りには絶対に知られたくないが

顧問をしているテニス部のコーチにひと目惚れしちゃってるんだよね。

歳は2つ上！彼女なし！というところまでは、生徒が勝手に聞きだしてくれたので知ってはいるものの

生徒にばれたくない一心で、思わせぶりな言動すら取れないのが最近の悩み…。

よ…よし…ここは現代社会の進歩に便乗して…。

やってみました。

千社札SNS投稿（ドーン）

でもさ、やっぱりこう、シェアしてもらうのとか、恥ずかしいし、私のアカウント知ってる生徒もいるし、と思って

「若者の流行に乗っかってみた（笑）」みたいなふざけた投稿しちゃったんだよね…。

神様にちゃんと真意が届くと良いんだけど…。

そんな恥ずかしい投稿をした数日後、部活が終わったあと

コーチに「流行に乗っかりましたね～」と言われて顔から火が出て穴を掘ってでも入りたくなった私。

「あの神社、○○神社ですよね？実家が近くて」と続いたコーチの言葉に、思わず

「え！？じゃ今度一緒に行きませんか？」と聞いて

「神社に？実家に？？」と生徒にはやしたてられてしまいましたとさ。

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その後、結局私が彼の実家に行ったかどうかは…神様だけが知ってるナイショのおはなし…